ユーザー事例|一文字厨器株式会社「お客さんが口に出さない思いは、データを蓄積、分析することで見えてくる」

インタビュー

2022.6.23

今回は、一文字厨器株式会社代表の田中諒さんにお話を伺いました。
一文字厨器株式会社の実店舗、大阪は難波の「堺一文字光秀」は世界でもトップクラスの品揃えを誇る老舗の包丁屋です。600 年以上もの歴史を持つ堺の包丁職人の技術を守りつつも、現代の技術と融合させた製品の開発など、新しい挑戦を重ねて進化を続けています。

プロが愛用する和包丁「堺一文字光秀」ブランド(左)と、現代の技術を融合した「SWORD FV10」シリーズ(右)

また、自社ページには詳細に解説された包丁の選び方やメンテナンス方法などを掲載し、研ぎ教室や研ぎ直しの無料サービスを実施するなど、事業からは“顧客”に対する強い意識がうかがえます。

実店舗のかたわらでは、EC 領域でも広く事業展開している一文字厨器株式会社。
その中心となって事業の DX を推進し、次々と新しい技術を取り入れている田中さんの根底には、データを通して顧客に寄り添いたいという熱い思いがありました。

デジタル化できる領域を探して DX を推進

—田中さんの自己紹介をお願いします。

田中諒と申します。以前は Web 広告の営業として IT 業界に身を置いていましたが、2016 年に家業に戻り、今年の 3 月に代表に就任しました。今は経営業務全般を取り仕切っていますが、仕事内容はアナログとデジタルの両輪です。

包丁づくりやメンテナンス、接客はアナログな部分が大きいですが、それ以外の領域はデジタル化していこうと、DX に力を入れています。 たとえば、3 年前までは経理業務にそろばんが使われていましたが、クラウドのレジシステムを導入して、データで売上を管理できるようにしました。
また、ネクストエンジンによる在庫管理や、店舗の前の人通りのデータを AI カメラで収集し、売上データと突き合わせて分析するといった取り組みをしています。

昔だったら数千万円かかっていたようなことが、現在は SaaS などを組み合わせて月に数万円でできるようになっているので、DX 的な取り組みはやりやすくなっていると思いますね。

—主な事業内容と、設立の経緯を教えてください。

弊社は今年で設立 69 年目で、大阪は難波の千日前道具屋筋という商店街に実店舗を構えています。この商店街は「料理人が通れば店が一軒建つ」と言われているほど調理機器の店が多く、東京なら浅草のかっぱ橋道具街のようなイメージですね。

大阪、難波にある実店舗「堺一文字光秀」

私の祖父がこの地に店を出したのが事業のはじまりでした。
祖父は若いころ堺の鉄の加工場で働いており、そこで堺の包丁職人と出会いました。彼らの信じがたい職人技を目の当たりにした祖父は、その素晴らしさを世に広めたいという思いで自分の店を立ち上げました。

飲食店街が近いこともあってお客さんにはプロの料理人が多く、彼らの要望に応えているうちに今では 2,000 種類以上の包丁が並ぶ店になりました。おそらく、これほど多くの種類の包丁を手に取って見られる店は世界で唯一だと思います。

店頭では2,000種類以上の包丁を手に取れる

最新の売上データをスマホひとつで確認

—EC 事業の運営体制を教えてください。

マネージャー 1 名が自社 EC と、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの各モールの店舗を管理しています。加えて、去年から Shopify で始めた越境 EC の担当が 1 名です。
その他、受注処理や発注、梱包発送などの担当者が 4 名です。

代表の田中さん(左から 4 番目)と従業員の皆さん

—EC 運営で苦労したことはありますか?

もともと EC の運営を始めたのは 1990 年台と早かったのですが、私が家業に戻った 2016 年の時点では、業界の流れに置いていかれているような状態でした。
たとえば、EC と実店舗の在庫の連携がうまく取れておらず、EC の注文分の在庫がちょうど店頭で売れてしまった、というようなことが起きていました。他には、自社 EC がスマートフォンに対応していないにもかかわらず、他のモールの店舗よりも売上が大きかったので、自社 EC を大きくアップデートする必要がありました。

家業に戻る前は IT 業界にいたということもあり、EC の運営体制をきちんと構築したいという思いから、ネクストエンジンなどのシステムを導入して改善を重ねてきました。

—TēPs を導入いただいたきっかけは何でしたか?

TēPs を導入する以前は、ネクストエンジンの売上情報の CSV を管理画面からダウンロードし、Google スプレッドシート上で店頭の売上情報と合わせる、ということを毎回行っていました。また、もともとデータの入出力や管理をスマートフォンでできる仕組みをつくりたいという思いがありました。

そんなとき、TēPs ならネクストエンジンの受注伝票の情報を自動で書き出すことができると知って、導入に至りました。

また、当時の TēPs にはネクストエンジンの在庫情報の更新機能はありませんでしたが、顧客の声を吸い上げて開発していこうという勢いを感じたのも、導入の決め手になった気がします。

—現在は TēPs をどのような業務でご利用いただいていますか?

売上情報の集計と、在庫の管理に利用しています。

TēPs で売上情報を自動で書き出しているので、休みの日や店を離れているときでも、スマホひとつあればデータを確認できます。実店舗と EC の最新の売上情報だけでなく、前年比・前月比のデータや、店舗の前の人通りと売上の比較データもスマホで見られるようにしています。

発注漏れがないように、残り注文と在庫数の比較もスマホでできるようにしていますが、それも TēPs が 15 分おきに商品ごとの在庫情報を自動で書き出しているからこそです。

また、以前は入荷した商品の在庫情報をネクストエンジンに反映する担当者が 1 人いましたが、今ではその担当者の業務の大半を、TēPs によって自動化できています。

TēPs は中小企業が大企業と戦うためのツール

—TēPs をはじめて使った時の印象を教えてください。

思ったよりもずっと使いやすかったです。私はプログラミングの経験などはまったくありませんが、私のような人間にも使いやすいようにと、UI にこだわりが感じられました。
触ったときに直感的にわかるような感覚も導入に至ったきっかけのひとつかもしれません。

—TēPs を使い続けて印象が変わったところはありますか?

今使っている 3 つのフレーズのうち、1 つ目はサポートの担当者に言われるがままに組みました。
2 つ目は公開されているフレーズを見よう見まねで自分で組み、3 つ目は完全に私一人で組みました。

自分でフレーズを組んでいて、意図したとおりに動いたときはとても嬉しかったです。一方で、意図したとおりに動かなかったときでも、面白いと感じました(笑)
どこが間違っているのかわかるような設計になっているので、それを見て直していくのも面白かったです。

自分で TēPs を触っているうちに(フレーズを組む)感覚を掴めるようになりました。

TēPs を触るのが「面白かった」と語る田中さん

—TēPs を一言で例えると、どんな存在でしょうか。

「大企業と戦うためのツール」という側面を感じます。
中小企業は、さまざまな SaaS と契約することはできても、各サービス間でデータを連携させるとなると、途端に実現のハードルが上がります。 自社システムを作ろうとしたら、開発費や管理費で莫大な金額が必要です。

でも TēPs なら、サービス同士を繋いでくれるじゃないですか

先ほど言ったリアルタイムな売上データの把握や、独自の在庫管理システムは、本来なら普通の中小企業では実現できなかったと思います。
しかし TēPs が各サービス間を繋いでくれるおかげで、大企業の数千万円規模のシステムと同等の機能を獲得できているわけです。

TēPs が潤滑油となって、色んなサービスのデータを繋いでいくことで、小さい事業者の道が拓けていく。そういった「つなぎ」の役割があるから「テープス」という名前なのかと思っていました(笑)

顧客の声はデータを通じてしか聞こえないものもある

—今後の事業展開について教えてください。

包丁の文化を次の時代につないでいきたいと思っています。
今は見た目が良い包丁を、安く手軽に買える時代です。しかし、そういったモノで部屋を満たして幸せになれるかといえば、疑問です。

安い包丁を何度も買いなおすよりも、どんな職人がどんな材料で、どのように造っているのかというストーリーを知ってから(包丁を)買って、自分で研いで手入れをし、子どもや孫に受け継いでいく。
そんな世の中のほうが幸せになれるんじゃないかと思っています。

そのためには私たち小売店が、お客さんの人柄や思いを汲み取り、その情報を蓄積し、包丁づくりに活かすという、業界と顧客との接点の役割を果たさなくてはなりません。
もちろんお客さんに接することも大切ですが、お客さんが口に出さない思いや課題感は、データを蓄積して分析することで見えてくると思います。それを踏まえて行動していくことで、私たちはお客さんに近い存在になりたい。

そのための DX なのだと、意識しています。

TēPs は先ほども言ったとおり、各サービスの間を繋ぐことができる、国内では稀有なサービスです。今後も連携先をどんどん増やして、国内の事業者を取り巻く環境を変えていって欲しいと思います。

—ありがとうございました。

リンク

一文字厨器株式会社

EC サイト:https://www.ichimonji.co.jp/
楽天市場店舗ページ:https://www.rakuten.co.jp/ichimonji/
代表の田中さん執筆記事:https://smbiz.asahi.com/author/11004142

田中さんのお話に出てきた業務に使える TēPs 活用事例

売上分析
ネクストエンジン|扱っている全商品の売上情報を自動で Google スプレッドシートに書き出す方法
ネクストエンジン|直近7日と30日の平均販売個数・売上を自動集計する
ネクストエンジン|店舗別の売上速報を自動で集計する

在庫管理
ネクストエンジン|商品在庫を取得し Google スプレッドシートの在庫数を更新する
楽天市場 RMS|在庫情報を取得し Google スプレッドシートの在庫数を自動で更新する
楽天市場 RMS|Google スプレッドシートをもとに在庫数を自動更新する

関連記事

     ホーム / ブログ / ユーザー事例|一文字厨器株式会社「お客さんが口に出さない思いは、データを蓄積、分析することで見えてくる」